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株式会社 謙信 代表取締役社長 榊原 雄太郎さん
高い完成度の立体造形物をつくるとともに、日本の素晴らしい伝統文化の発信企業として成長を続けていきたい。

子供の頃から「人と同じことをするのは好きじゃなかった」という、榊原さん。学生時代には国際政治学を学び、当時、殆ど情報がなかった中国やソビエトに興味を抱き単身渡航。その後、セコムへ押かけ入社、最年少のマーケティング責任者となるも、志し新たに産業能率大学の職員となる。しかし、恵まれたビジネスコンサルタントの地位を捨て、1997年に独立、株式会社 謙信を設立する。現在、ART OF WARのブランド名で戦いをテーマに、三国志・水滸伝画で世界的に著名なCGアーティスト正子公也氏とのコラボレーション、三浦建太郎氏原作の「ベルセルク」の持つ深い世界観を再現した立体作品の制作などを手がけている。生死をかけた戦いの中にある普遍的な美しさを追求する作品づくり、今後のビジネス展開についてお話しいただきました。



●100年先に世界で評価されるブランドを育てたい。一時的なブームで消費されるのは絶対に嫌だ。
私は独立しようと決めてから「本当にやりたいこと、求めていることは何か」ということを真剣に考えました。会社を大きくしたいとか、お金を儲けたいとか、有名になりたいとか色々ありますよね(笑)?でも、結論は、ART OF WARというブランドを確立することだと。それを実現するためには、5年や10年ではできないと思いました。東洋的な発想ですが、孫の代まで。3世代続いていれば認められるのではないでしょうか。世界的に有名なブランドがそうであるように、目先のことに走って短期間で消費されることなく100年続いていけば、社会的にも評価されるし、その時に一流のものをつくっていたらブランドとして一流の評価をしてもらえると考えたんです。ですから、作品づくりにも徹底的にこだわっていますし、私もクリエイターたちも、それこそ命をかけて真剣に取り組んでいます。たとえ今売れなくても構わない。100年後に残るもの、本物のクオリティーを追求していくことを大切にしていきたいと思っています。



●日本の歴史の中で、政治、経済、文化は、安土桃山時代が頂点だと思う。
人がやらないことをやりたい。しかも、死ぬまでできること。それで歴史に着目しました。人間は何処から生まれて何処へ行くのか?永遠のテーマがそこにありますからね。よく日本人は暗い、海外に行くと弱いとか言われるじゃないですか。最近でこそイチローや中田、丸山たちの活躍で少しずつイメージが変わってきましたが、何か日本人がアイデンティティーを喪失しているような気がしてならないんです。欧米文化が良しとされカタカナ英語が巷に溢れて。日本人だって破天荒で活き活きして、素晴らしい文化を築いていた時代があったんです。私は日本の歴史の中で、政治、経済、文化は、安土桃山時代が頂点だったと考えています。織田信長がヨーロッパよりも早く政教分離をし、鉄砲伝来から早い時期に世界最強の鉄砲大国になった。明軍との戦いにも磐石な軍事力を誇っていた。当時の美術品も素晴らしく、戦国武将の着ているものもしっかりとした美学を持っている。生きるか死ぬかのギリギリのところから搾り出される決断と美学の存在。それを再現したい。私は、そこに日本人の原点があるような気がしています。



●クリエイターには作品づくりに集中して、本当に良いものを仕上げてもらいたい。
ART OF WARというブランドを確立させるためには、クリエイターにも私と同じ考え方でいて欲しい。テーマである「生と死と安土桃山」に完全同期してもらい、死ぬ気で頑張ってもらう。普通の会社なら、70%ぐらい一致すれば良しとされるのでしょうが、私はダメですね。実際に才能のある人が大勢たずねてきますが、99%折り合いがついても、残り1%が合わなければ採用しません。ちょっと大袈裟かもしれませんが、ART OF WARは少数精鋭で純血主義を貫きたい。クリエイターには、余計なことは考えさせたくないんです。量産するためには型起こしが必要なのですが、あまり細かいところまでこだわると、型が起こせない可能性があるんですね。でも、そんなことはどうでもいい(笑)。とにかく最高のものをつくる。後は私が考える。これが一般のメーカーだと、量産することを前提にクリエイターの仕事に制約をつけます。そんなことでは本物のクオリティーは実現できません。クリエイターの自由な発想で限界に挑戦し、それを超えていく。そこに本物の価値が生み出されていくと思います。



●メーカーとしてニーズを先取りした新しい市場を生み出し大きく育てていく。
会社を設立した当初は、海外からの輸入品や完成度の高い国内メーカーの商品を販売していました。ただ、私のイメージに一致したキャラクターや素材があれば、完成度の高い立体にしたいと思っていました。そこで出会ったのが「ベルセルク」です。これだ!と、すぐにつくってしまいました(笑)。それから、とにかく見てくださいと作家の三浦さんの所へ。クオリティーの高さと、私の考え方に共感していただき、立体の制作を任せてもらうことになりました。最初はガレージキットで発売したのですが、あまり売れませんでした。完成度が高すぎて、ガレージキットをつくれる人が少なかったんですね。完成品を販売しないと市場が広がらない。そこで、完成品をつくる新しい挑戦が始まったわけです。第一作の「ガッツの乗馬」は世界最高の完成度です。ART OF WARのお客様は、立体造形物に意見をもっている、いわゆるわかってる方が多くいらっしゃいます。その方たちを唸らせる作品づくりをするわけですから、こちらも必死です。世界一の完成品をつくるノウハウと技術の習得は、ここまでで良いということがありません。これからも、さらなる完成度を目指して、ART OF WARの挑戦は続いていきます。



榊原 雄太郎プロフィール
国学院大学卒業、セコム、産業能率大学を経て独立。1997年、株式会社 謙信を設立。1962年生まれ、波乱に満ちたペガサス。